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              漢字の音訳 「 岡 田 メ モ 」

                         横浜漢点字羽化の会代表  岡田 健嗣

[このサイトにございます「岡田メモ」は、ご自由にダウンロードして、お試しいただけます。ボタンを右クリックして、「名前をつけてリンク先を保存(K)」を選んでください。]

                      岡田メモ

 「岡田メモ」を更新しました。      2024年 4月 1日 (令和6年)

 これまでの記述の不備などを改めました。 2019年 6月 2日 (令和元年)


 令和元年五月朔日、チューンアップした「岡田メモ」を掲げます。
 随意にダウンロードしてお使い下さい。
                         2019年 5月 1日 (令和元年)


    
「岡田メモ」について

 「岡田メモ」は、本会の岡田健嗣が、音訳の活動に関わる中で、漢字の文字説明の必要性を感じて、メモとして作成を始めたものです。現在では3000字を超える数に達しましたので、本会のホームページに置いて、どなたでもダウンロードしていただけるようにしました。
 お試し下さい。


    
音訳とは

 音訳とは、音訳書を製作する最も初めの過程です。音訳書とは、一般に音訳者によって音声化されたものを録音媒体に収録して、主として点字図書館や公共図書館に保管・運用されて、視覚障害者、あるいは視読の困難な方々に貸し出されて、聴読に供されることを目的として製作されるものを言います。従って音訳書とは、通常の書籍の概念である、文字で表されていて一冊に綴じたものというものからは、かなり離れた概念のものだと言わざるを得ません。
 このようなものを書籍として位置づけるようになるには、それなりの経緯があったものに違いありませんが、ここではそこには触れません。ただ言えることは、文字は、視覚という感覚器官に訴えてその機能を果たすもので、その意味では、ルイ・ブライユの点字の創作と並んで、この音訳による聴読という世界の開発が、視覚障害者に書物の世界の扉を押し開いたものであることは間違いありません。
 有史以来の人間の営みから、文字から得る知識や経験を無視することはできません。また文字を方法として情報を伝達し、思想を述べ伝えるという営みが、延々と続いて来ました。
 しかし文字は、視覚に訴えるものですので、視覚障害者にとっては最も大きな障壁でした。多くの情報や知識や思想はこの文字によって伝えられ、吸収され、さらに発展し伝播して行きました。が、その中で視覚障害者だけは、そこから取り残されていました。その影響は、現在もまだまだ後を引いています。
 音訳が始まったのは、正しく録音媒体が開発され、安価な装置が普及し始めてからのことで、せいぜい半世紀ほど遡ることができるばかりです。歴史というほどの歴史もありません。取り分けわが国では、わが国の言語の文字表記の複雑さが、この音訳を困難にしています。
 音訳の原則は、言うまでもなく、書物に書かれている文字を、そのまま音声に出して読み上げることにあります。そのまま読み上げるのですから、何も考えなくとも、文字通り文字を読み上げればよろしい、ということになるのですが、わが国の言語は、一朝一夕にはそれを許してくれません。
 わが国の言語は、もともと文字を持つことがありませんでした。その代わり、大陸から表意文字である〈漢字〉がもたらされて、中国語の音をもとにした「音読」と、その文字の表す意味から、わが国でそれが何を意味するかというところから読み解かれた「訓読」という読み方、さらに中国語にはない「て・に・を・は」や「送りがな」と呼ばれる音で表される文の要素を表す文字を、〈漢字〉から〈仮名文字〉として創出するなど、わが国独自の工夫が、弛むことなく続けられて、現在に至っています。それだけに、単に書かれている文字をそのまま音声化すればよろしいとは、残念ながら言うことができないのです。
 そこで音訳は、音訳は文字をそのまま読者に提供するものではないという、音訳書を書物として捉えた場合の、最も基本的な部分に由来する困難に行き当たります。その中の一つが、日本語の書物の音訳では、〈漢字〉で表されているところをどのように音声で表現するかということが現れて参ります。それが音訳者の肩に重くのしかかっているのです。そこで「岡田メモ」は、一つの方法を提示しようと試みたものです。
 これまでの音訳書では、〈漢字〉の説明は、音訳者の創意に委ねられていました。が、その結果、一つの文字の説明が、音訳書によってまちまちだったり、場合によってはその音訳書の中でも、同じ文字が出て来る度に異なった説明になっていたりということが、しばしばありました。そこを何とか統一した説明ができないか、これがこの「岡田メモ」のコンセプトです。


    
「岡田メモ」の原則

 音訳の中で現在行われている漢字の説明は、先にも述べましたように、音訳者の創意に委ねられています。どのように説明するか、統一されてはいません。しかも、適切な漢字の説明とはどのようなものかということも、どこからも提示されていません。
 かつてパソコンが普及し始めて、視覚障害者にも音声読み上げのソフトウェアが開発されて、そこに漢字の説明が搭載されました。そして音訳者がその読み上げソフトの説明を参考にして漢字の説明をしたことがあります。ところが音声読み上げソフトの漢字の説明は甚だ不完全なもので、間違った説明や間違った理解を導き兼ねない説明が散見されるものでした。そのためか、現在ではまたそこから離れて、音訳者の任意の説明が一般となっています。
 そこで「岡田メモ」では、以下のような原則の中で、説明を試みることにしました。

 @漢字の特徴は、その三要素と言われる「形・音・義」にあると言われます。この三つの要素に触れないものは、漢字の説明とは言えないと考えました。
 Aしかし「形・音・義」それぞれも極めて大きな要素です。この三つの要素を組み合わせて説明とした場合、説明そのものが大変大きなものになってしまい、文章の流れを阻害し兼ねません。そこで「岡田メモ」では、「形」と「音・義」とを分けて、まずは「音・義」を以て漢字の説明とすることにしました。「形」である字形の説明は、「岡田メモ」には含みません。これまでの漢字の説明には、字形を説明することによってなされることがありましたが、ここではその方法は採りません。
 B字形の説明を必要とすることも必ず出て参ります。そこでは字形の説明の方法に沿って説明していただきます。その方法は、「岡田メモ」とは別に掲げます。
 C「音」には「音読」と「訓読」があります。「音読」にも「漢音・呉音・慣用音・唐音」などがありますし、「訓読」も一つで代表させることが困難な場合が少なくありません。それらの取捨は、極めて肝要と考えます。
 D「義」を説明するのは極めて困難です。訓読もその一翼を担ってくれますが、それだけでは不十分と考えました。そこで、音読の熟語を掲げることで表すことにしました。必ずしも正確な説明とはなりませんが、聴読者の皆様には、訓読と音読の熟語、そして音読という並びからその漢字を類推していただくことにしました。
 E以上をまとめますと、漢字の説明は、原則として「訓読・音読の熟語・音読」という順を以て行いました。漢字には、代表的な訓読が幾つかあったり、通常の音読が幾つかあったり、訓読が設定されていなかったりということがしばしばあります。また同音・同訓の漢字も珍しくありません。そんな場合は原則から離れた説明になったり、熟語の選択を工夫したりしました。
 以上が「岡田メモ」の原則です。

 音訳者の皆様にご使用いただいて、聴読者の皆様からもご意見をお寄せいただいて、よりよいものに育てていただけることを願って止みません。
                       平成31年 3月 (2019年)
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