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漢点字講習用テキスト
初級編 第31回
    5  複合文字 (2)

 2.第一基本文字と比較文字で構成される文字 (2)(承前)
 ※「良 」を部首として含む文字四つと、「艮 」を部首として含む文字六つ。
 *この二文字は墨字では、形の上で、天辺に点があるかないかの違いしかありませんが、音と意味には大きな相違があります。前者は「良 」の字義、すなわち善良で豊かでゆったりとしたという意味を、後者は、目に隈取りをするとか、がっちりとはまり込むという意味を表します。漢点字では何れも「」で表されます。


 (26)  根   コン  ね
 「木偏」の右側に「艮 」を置いた形の文字です。木の根が地中深く食い入って、がっしりと構えている様子を表しています。コン≠ニ読んで、精神力や気力の強さを表し、ね≠ニ読んで、最も下のところ、ものごとの根本、ものごとの生じるところ、本来の性質などを表します。数学では、英語のルートの訳語で、平方根・立方根と用いられます。漢点字では、「(木)と「(艮 )」で表されます。
 「根本」「根拠」「根元」「根幹」「根茎」「根性」「根気」「草根木皮」「大根」「球根」「平方根」「立方根」「根ほり葉ほり」「根も葉もない」「根を詰める」

 (27)  限   ゲン  かぎ‐る かぎ‐り
 「こざと偏」の右側に「艮 」を置いた形の文字です。土を盛って、ここが境界だと宣言することを表しています。かぎる、かぎり≠ヘ、地域やものごとの境界を定める意味とともに、そこにあるもの全部、あるだけ出し切るという意味も表します。漢点字では、「(こざと偏)」と「(艮 )」で表されます。
 「限界」「限定」「限度」「制限」「期限」「有限会社」「力の限り」

 (28)  退   タイ  しりぞ‐く しりぞ‐ける ひ‐く の‐く
 「艮 」に「しんにょう」を加えた形の文字です。足が進まなくなる、足が止まるという意味を表します。公の立場や職を退く、その場所を離れる、社会の気風が衰える、後ろ向きな気分が立ち込めるという意味に用いられます。漢点字では、「(しんにょう)」と「(艮 )」で表されます。
 「退任」「退職」「退学」「退院」「退廃的」「引退」「退け時」「退っ引きならない」

 (29)  既   キ  すで‐に
 「艮 」とその右側に、腹一杯食べる、食べ尽くすという意味を表す部首が置かれた形の文字です。すでに≠ニ読んで、…は行われた、…をしてしまった、こうなった上には…、という意味に用いられます。キ≠フ音は、「既婚者と未婚者」、「既知数と未知数」のように、「未 」の対語として用いられます。漢点字では、「(艮 )」と「」で表されます。
 * この文字の旁は、食べ尽くす≠ニいう意味の部首です。単独に用いられることは、ほとんどありません。この部首は、これまでに出ていませんが、「既 」は、多く他の文字の部首となりますので、ここにご紹介しました。
 「既婚者と未婚者」「既知数と未知数」「既着と未着」「既製服」「デジャビュとは既視感のことです。」
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