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漢点字講習用テキスト
初級編 第30回
    5  複合文字 (2)
 2.第一基本文字と比較文字で構成される文字 (2)


 前節に続けて、〈第一基本文字〉と〈比較文字〉が部首として構成される文字をご紹介します。

 ※「良 」を部首として含む文字四つと、「艮 」を部首として含む文字六つ。
 *この二文字は墨字では、形の上で、天辺に点があるかないかの違いしかありませんが、音と意味には大きな相違があります。前者は「良 」の字義、すなわち善良で豊かでゆったりとしたという意味を、後者は、目に隈取りをするとか、がっちりとはまり込むという意味を表します。漢点字では何れも「」で表されます。

 ・「良 」を部首として含む文字四つ。
 (20)  朗   ロウ  ほが‐らか
 「良 」の右側に「月」を置いた形の文字です。「良 」は、丸く綺麗な、粒の揃った穀物を表して、よい≠烽フを意味します。この文字は、清らかな月の光と「良 」で、明るくて曇りのない様子を表します。漢点字では、「(月)」と「(良 )」で表されます。左右が反対になっています。
 「朗読」「朗唱」「朗詠」「朗吟」

 (21)  娘   ジョウ  むすめ
 「女偏」の右側に「良 」を置いた形の文字です。「良 」は丸く粒の揃った穀物の意で、よいもの、美しいものを表しています。むすめ≠ヘ、親から見た時の女の子を指すとともに、若く美しい女性という意味にも用いられます。漢点字では、「(女)」と「(良 )」で表されます。
 「娘さん」「娘子」「小娘」

 (22)  郎   ロウ
 「良 」の右側に「おおざと」を置いた形の文字です。ロウ≠ヘ、男性の敬称として、見目麗しい男、あるいは凛々しい男の意味を表します。我が国では、「太郎、次郎」と、男性の名前に用いて、力強い男であれとの祈りを込めたり、兄弟の順位を表したりします。漢点字では、「(良 )」と「(おおざと)」で表されます。
 「太郎さんと次郎さん」「女郎花(おみなえし)」

 (23)  浪   ロウ  なみ
 「さんずい」の右側に「良 」を置いた形の文字です。水が穏やかに流れる、ゆったりと波が立っている様子を表す文字です。ロウ≠ヘ、ゆったりした波という意味から、その波に揺られる、足下の定まらないという意味も生まれました。江戸時代、主を失った武士、禄を食まない武士は、「浪人」と呼ばれました。現在でも、職に就けずにいる人、大学などを目指して、何処にも所属していない人を、「浪人」と呼びます。漢点字では、「(さんずい)」と「(良 )」で表されます。
 「浪人」「浪費」「波浪」「浪曲」「浪花節(なにわぶし)」

 ・「艮 」を部首として含む文字六つ。
 (24)  眼   ガン ゲン  まなこ め
 「目偏」の右側に「艮 」を置いた形の文字です。「艮 」は、ものをしっかりとはめ込むことを表して、ここでは、骨の窪みにしっかりとはまり込んだ「目」を意味しています。目で見ることは、ものの本質に迫ることで、そこから、ものの中心、行動の目的の意味が生じました。漢点字では、「(目)」と「(艮 )」で表されます。
 「眼科」「眼下」「眼球」「眼目」「開眼(かいげん)」「近眼」「三白眼」「眼をつける」「びっくり眼」

 (25)  銀   ギン  しろがね
 「金偏」の右側に「艮 」を置いた形の文字です。ギン≠ヘ、白く光沢のある、美しい貴金属です。しろがね≠ニは、白く輝く金属の意です。そこから、白く輝くものを、ギン≠フ語で表すようになりました。また古くギン≠ヘ、金と並んで、むしろ金より安価なことから、使い易い貨幣として流通しました。そこから、貨幣そのものを表すようになりました。漢点字では、「(金)」と「(艮 )」で表されます。
 「銀行」「銀貨」「銀河」「路銀」「銀縁眼鏡」「銀杏(いちょう、ぎんなん)」
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