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漢点字講習用テキスト
初級編 第28回
    4  基本文字(3)… 比較文字

 比較文字の近似文字
    5  複合文字(2)
 1.第一基本文字と比較文字で構成される文字(1)(承前)

 (7)  春   シュン  はる
 漢数字の「三 」に「人」の字を重ねた形、その下に「日」を置いた形の文字です。この文字の上の部分は、元は「屯 」で、植物の芽が萌え出そうとする様子を表すものです。その下に「日」を置くことで、なお暖かい、生命が活発に動き出そうという気運を表しています。はる≠ヘ、寒く暗い冬を過ごした後の、新たな期待を持った、希望に満ちた、新しい年の始まりを意味しています。旧暦では一月が、春の季節の始まりです。現在私たちが使っている太陽暦の春は、三月からです。エネルギーに満ちて生命が活発に動き出すことから、人生の躍動期、若さに溢れている時期にも喩えられます。漢点字では、「三」と「人」が重なっている形を横の線三つの「大」と捕らえて、「(大)」と「(日)」で表されます。
 「春夏秋冬」「春秋戦国時代」「春眠暁を覚えず」「春宵一刻値千金」「春愁」「青春」「春は曙」「春一番」「春日(かすが)」

 ・「因」とそれを部首として含む文字一つ。
 (8)  因   イン  よ‐る ちな‐む ちな‐みに
 「国構え」の枠の中に、「大 」を置いた形の文字です。敷物の上に人が手足を広げて横たわった形を象っています。何かを下地にしてその上に加えるという意味を表します。いん≠ヘ、原因、要因、素因%凾ニ用いられます。ちなむ≠ニは、ある縁によって何かをなすことで、ちなみに≠ニは、それに関連して、ついでに言えばの意味に用いられる接続詞です。漢点字では、「(国構え)」と「(大)」で表されます。
 「因縁」「因果応報」「因果関係」「因果律」「原因」「要因」「素因」「誘因」「病因」

 (9)  恩   オン  いつく‐しむ
 「因 」の下に「心」を置いた形の文字です。「因 」は、下地に何かを重ねることを意味する文字です。「恩 」は、「心」に何かを加えること、よい印象を与えることという意味があります。おん≠ニ読んで、親の恩、先生の恩、先輩の恩等と用います。漢点字では、「(因)」と「(心)」で表されます。
 「恩人」「恩恵」「恩師」「恩情」「天恩」「謝恩会」

 ・「央 」とそれを部首として含む文字一つ。
 (10)  央   オウ  なか‐ば
 「大 」の横棒の上に、縦棒を跨ぐように、四角い枠をはめた形の文字です。四角い枠は、首かせを象った形で、「大 」の字は、人が手足を広げた形です。人が手足を広げたところに、首かせをはめた形を象っているのが、この文字です。神様に捧げられた犠牲とも、外に向かっての魔除けとも言われます。漢点字では、「(大)」と、音のおう≠フ「」で表されます。
 「中央」

 (11)  英   エイ  はな はなぶさ
 「草冠」の下に「央 」を置いた形の文字です。真ん中が窪んだ花を表しています。英雄≠ニは、華やかな花から、優れたもの、秀でたものの意味の熟語です。人名に用いられるときは、ひで≠ニ読まれることがしばしばです。また華やかなことから、かつて最も繁栄した国、イギリスを指す語に当てられました。漢点字では、「(草冠)」と「(央)」で表されます。
 「英雄」「大英帝国」「英語」「英会話」

 ※「天 」の上に点が二つ付いたものを部首として含む文字二つ。
 (12)  関   カン  せき かか‐わる
 「門構え」の中に点が上に二つ付いた「天 」が置かれた形の文字です。両開きの門に、かんぬきをかけた形を象ったものと言われます。せき≠ヘ、国境に設けられた門で、何時も閉ざされています。そこで通行人を改めます。平安時代から江戸時代を通して、「逢坂関、安宅関、箱根関、白河関」が有名です。せき≠ナは、相撲の最上位とその次を「大関、関脇」と呼んで、幕内の力士をせきとり≠ニ呼びます。かかわる≠ニ読んで、一つのものと別のものとの繋ぎ目、人と人との関係を表します。ものとものとの繋ぎ目ということから、身体の運動器の繋ぎ目、肘や膝を、「関節」と呼びます。漢点字では、「(門構え)」と「(天)」で表されます。
 「関東」「関西」「関門」「関節」「人間関係」「白河関」「関わり合い」
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