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漢点字講習用テキスト
初級編 第20回


    4 基本文字 (3)
        比較文字

  本章では、三つ目の〈基本文字〉をご紹介します。
  〈基本文字〉とは、偏≠ニか旁≠ニか、他の文字の部首(パーツ)となる、最も小さい単位の文字を言います。これまでに〈漢数字〉と、一マスで表す〈第一基本文字〉をご紹介しました。
  今回は、〈比較文字〉と呼ばれる文字です。
  第一基本文字に比比≠ニいう漢点字がありました。これは、「ヒ、くらべる」と読みますが、漢数字の漢数符「」と同様に、一マス目に〈比比〉の点字符号「」(45の点)が置かれる文字です。この漢点字は、二マス目に来る点字符号が部首となって、他の多くの文字を構成します。
  この〈比較文字〉は、川上先生の発案になるものです。先生のお考えの〈基本文字〉が、如何に整理され分類されたものか、この〈比較文字〉から、最も斬新的な形で示されていることをご理解いただけるものと思います。
  この〈比較文字〉は二つに大別されます。
  @意味の上で、小さなグループを作る文字ー「上と下」「右と左」「父と母」のように、意味的に、対、あるいはグループをなす文字です。
  A長さ・重さ・容積などの単位ーここではいわゆる尺貫法≠フ単位を表す文字です。既に「分、合」が出て来ていますが、多くはこの〈比較文字〉に含まれる文字で表されます。

 1. 対、あるいはグループをなす比較文字(1)

  ※「父」と「母」
  (1)  父   フ  ちち
  手で斧を持って、振り下ろす形を象った文字です。漢数字の八の下に左右に交差した斜めの線で表されます。古くは、年長の男性の呼称でしたが、現在では、父親の意味に用いられます。漢点字では、「父」で表されます。
  「父母」「父兄会」「父性」「父祖」「父系家族」「祖父」「神父」「父親」「父方」

  (2)  母   ボ モ  はは
  「女」の文字に、点を二つ加えた形、乳首のある女性を象った文字です。赤ちゃんに授乳する女性、子を産み育てる女性、つまり母親を意味する文字です。母国、母校≠ニ、出身を表す意味にも用いられます。漢点字では、「母」で表されます。
  「母子」「母国」「母校」「母港」「母船」「父母」「祖母」「酵母」「母系家族」「航空母艦」「母親」「母方」

  ※「上、中、下」
  (3) 上   ジョウ ショウ  うえ うわ かみ あ‐がる あ‐げる のぼ‐る のぼ‐せる
  下から上を指し示す形の文字です。このような文字を〈指事文字〉と呼びます。上の方、上にいる人、上の方を目指して進むという意味があります。漢点字では、「上」で表されます。
  「上方」「上昇」「上下」「上流」「上品」「上訴」「計上」「机上」「上方」「上がり框」「立ち上がる」「上り列車」「売り上げ」

  (4)  中   チュウ  なか うち あた‐る
  横長の「口」の真ん中を、縦線が交差した形の文字です。四角い板を貫いた形を象っています。なか≠ニ読んで、ものの内側、ある範囲の中央、ものの中程、真ん中に来る、また仕事や動きが進行している最中、日の出ている間、すなわち昼間を意味します。あたる≠ニ読んで、ものの要点を貫く意味、的にあたる(的中)、毒にあたる(中毒)、病気にかかる(中風、卒中)などと用いられます。漢点字では、「中」で表されます。
  「中国」「中央」「中心」「中学校」「中年」「中立」「中庸」「最中」「休憩中」「日中」「中天」「南中」「的中」「命中」「食中毒」「中風」「卒中」「真ん中」「中身」「中程」「最中」

  (5)  下   カ ゲ  した しも もとさ‐がる さ‐げる お‐りる お‐ろす くだ‐る くだ‐す くだ‐さる ひく‐い
  「上」を逆さにした形の文字です。上から下を指し示すという意味を表します。「した、しも」と読んで下の方にあるもの、上に対して下に位置するもの、流れの先の方の意味を表します。「もと」と読んで、ものの下の部分、足下の意味を表します。「さがる、さげる」と読んで、役所をやめて民間に身を置いたり、ものを上から下へ移したりすることを表します。「おりる、おろす」と読んで、高いところ、あるいは乗り物からおりる、ものをおろす、「くだる、くだす」と読んで、高いところから低いところへ移動する、あるいは上から下へものを言う、品物を与えるなどの意味を表します。慣用的に「ください、くださる」と、謙譲的にも用いられています。漢点字では、「下」で表されます。
  「下方」「下流」「下校」「下車」「上下水道」「下司」「上り下り」「下り列車」「川下り」


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