「うか」123  トップページへ
ニ ュ ー ス ・ お 知 ら せ

      ご報告とご案内    岡田 健嗣

 本誌機関誌『うか』第123号は、今年の1月に発行する予定でしたが、新型コロナ・ウィルスの感染者の急増とぶつかり、止むなく発行を断念しました。流行はとても下火とは言えない情況とは思われますが、それでもそろそろ出したいという気持ちが起こりまして、会員のお力をお借りすることになりました。

1 賛助会費への御礼
 2021年度に賛助会費をお納めいただきました皆様、誠にありがとうございました。ご芳名を掲げて、感謝に代えさせていただきます。

  村田忠禧様  坂口喜代様  雨宮絢子様  岡 稲子様
  河村美智子様 馬場威力様  関口常正様  政井宗夫様
  田崎吾郎様  木原純子様

 大変ありがとうございました。有効に使わせていただきます。

2 『萬葉集釋注』第十巻が完成致しました。
 この10年をかけて、伊藤博著『萬葉集釋注』(集英社文庫)の漢点字訳を進めて参りましたが、このほどその第十巻が完成致しました。14分冊となりました。製本した漢点字書は、これまで同様、横浜市中央図書館に所蔵していただきました。
 第十巻は、『萬葉集』の巻十九と巻二十を収めた巻で、『萬葉集』の結びとなっています。
 以下、伊東先生の「釈注」から引用させていただいて、内容のご紹介とさせていただきます。

 巻第十九は、『万葉集』第2部末4巻の第3巻。天平勝宝二年(750)3月1日から天平勝宝5年2月25日まで3年間、大伴家持33歳から36歳までの歌を収める。この時期は家持の越中国守在任時代の後期(4139~4256=1年5か月)と再度の京官時代の初期(4257~4292=1年7か月)とにあたる。4139から4292まで154首。前者は118首、後者は36首で、大部分は越中国守時代の詠の集合といってよい。内わけは、長歌23首、短歌131首。家持の作は長歌17首、短歌86首。巻末に、この巻に限って家持の作品には名字を示さないと明記している。
 巻末におけるこの明記は、「大伴宿禰家持歌集」4巻を根幹にして成り立ったと見られる『万葉集』末四巻にあって、巻十九が特別視されていることを物語る。この特別視は歌の表記の上にも現われている。すなわち、『万葉集』の末四巻は、巻十七、巻十八、巻二十の3巻の歌々が音仮名(表音文字)主体によって記されているのに対し、巻十九の歌々だけが正訓字(表意文字)主体によって記されているのである。巻十九巻末尾の格別な注記と巻十九の歌々の表記の特色とには深い関係があり、これは、末四巻の成立の問題ともかかわる。
 巻十九は、家持にとってとくに自信の持てる、いわゆる文芸性の高い歌々を集めた歌巻として、他の3巻に先立って、天平勝宝5年(753)の前半の頃には成立を見たものと覚しい。当面の主たる読者としては、家持自身や妻坂上大嬢、母(姑)大伴坂上郎女はもちろんのことながら、多年の歌友大伴池主が重要な人として考えられる。家持は、これに引き続き、巻19を基準に2つの歌巻を編んだ。それが原本巻十七(3922~4031)と原本巻十八(現存巻十八に伝来途上の脱落歌を復原した形)であった。両巻原本完成の時期は、天平勝宝7歳2月、難波で東国諸国の防人歌を蒐集しはじめるより以前、おそらく天平勝宝6年中のことであったと推測される。家持が生涯畏敬しつづけてやまなかった聖武天皇や橘諸兄が健在であった時期で、家持としては、さような人びとの高覧に与りたいというのが歌集編纂の本願であったふしがいちじるしい。後述するように、すくなくとも巻十九相当「大伴宿禰家持歌集」一巻は、表立っては、家持多年の庇護者、左大臣正一位橘朝臣諸兄への献上本として成り立った形跡を看て取ることができる。    (以下略)

 10年という年月をかけて本書の漢点字訳を進めて参りました。本会会員の皆様の、息の長い活動の成果であることは間違いありません。
 わが国最古の歌集である『萬葉集』を、何とか漢点字で読みたい、また、原文はどんな風に書かれているのだろうか、等々、手に触れることのできなかったころは、空想の世界の書物でしたが、実際に読めるようになってみると、その奥深さは想像を遙かに超えるものであることを、骨身に染みた思いでおります。
 会員の皆様への感謝を込めて、ここに深く頭を垂れます。大変ありがとうございました。

3 国立国会図書館
 かねてより、本年4月から、漢点字のデータを、サピエ図書館の蔵書とするというご案内を、国立国会図書館から頂戴しておりました。
 先月下旬に、予定通り4月から、サピエ図書館で、蔵書となるデータを受け入れることになった旨、ご案内が届きました。
 早速当方で製作しております中から、極短いものを、お送りしました。
 しかしながらまだ、本誌の発行に間に合う内には、どんなものか、お答えは届いておりません。
 お待ちすることに致します。

4 音訳版『常用字解』の完成が間近です。
 毎度ご報告しておりますが、いよいよ音訳版の『常用字解』の完成が間近となりました。
 現在音訳版を製作するのに当たって、これまでにない試みを幾つか行って参りましたが、それを文字情報として収録する作業に取りかかっております。
 音訳書というのは、晴眼者の皆様が聴読するということは、まずありません。しかし音訳に携わったものとしては、他の音訳者の皆様にも、どのような取り組みをしたかということを知っていただきたいという、誠に素朴な欲求が頭を擡げて参ります。
 それを文字資料として収録致しますので、ご笑覧賜れれば幸甚に存じます。
 また、文字説明の資料として、「岡田メモ」と呼ぶファイルを作っております。
 本ホームページに掲載してありますので、ご利用賜れれば幸甚に存じます。
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