「うか」070  トップページへ
        『字解』音訳プロジェクト、ご参加のお願い
 以下は、横浜市議会議員の大滝正雄先生がご自身のBlogに、本会の活動をご紹介下さったものです。大滝先生はかねてより、視覚障害者の国語教育に一方ならぬご関心をお寄せ下さり、本会の活動をご支持下さっておられます。また昨今の殺伐とした社会状況に鑑みて、今こそ古典に親しんで、人間を考えること、そのようなことそのものが心の余裕となるのではとおっしゃっておられます。

           「大滝正雄先生のBlog、2008年9月3日」より

  2008.09.03
  横浜漢点字羽化の会による漢点字訳辞書『常用字解』がまもなく完成します


 横浜漢点字羽化の会は、1997年に『漢字源』(藤堂明保編、学習研究社)を漢点字版として完成。全90巻の大部になる同書は現在、横浜市中央図書館が所蔵・公開しています。この刊行には横浜国立大学の村田忠禧教授がご尽力。学習研究社のデータをもとにボランティアらが点字を打ち、手づくりで製本も行なうという労作でした。今回、同会が新たに挑んだ『常用字解』(白川静編、平凡社)は、視覚障害者にも漢字の「字形」の理解が出来るよう便宜が図られているもので、『漢字源』と合わせると視覚障害者にとって、漢字理解がより進むと共に、日本文化や中国古典への鑑賞の幅をいっそう広げられるようになると、完成が今から待望されています。
 この訳本も、横浜市中央図書館に寄贈する予定で、今年秋に前半を、09年度に後半が納入される見通しです。「〜羽化の会」の岡田健嗣代表は、「今回の試みで(視覚障害者は)二つ目の座標軸を手にすることになります。幾つかの違った視点を持ち得るということは、それだけで視野の広がりと認識の深まりをもたらします」と、製作に携わっている皆さんへの感謝と完成間近の喜びを綴った書簡を、私に送ってくださいました。

 「学校教育(視覚障害者)の中にも漢点字の導入を」と、岡田さんたち粘り強く運動を進め、私も微力ながら漢点字の普及活動を支援させていただきました。「時間がかかるな」というのが、私の正直な実感なのですが、今年の夏、朝日新聞で興味深い文章を読みました。
 8月20日付け、『夏に語る』という記事の中で、作家の藤本義一さんがこう語っています。「〜たとえば、点字という手段はどうか。点字作文コンクールの審査委員長をしているが、目の不自由な方たちが深い視点を持って文章を書いていることに気づかされる。点字が一般にもっと普及して、健常者の表現活動にも遣われるようになってきたらいいな。目の不自由な人たちにも何かを伝えたいという思いが広がり、うるおいを取り戻していけるんと違うかな」。藤本さんは、戦後の日本の歩みを「干からびていったということ」と表現し、“人間の精神の干潟とひび割れ”を鋭く指摘しています。「アナログな表現にこそ、新しい可能性が隠れている」との作家の心眼に、私は点字の意味を改めて思い返したのでした。
トップページへ