東京漢点字羽化の会学習会報告

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「うか」066
  第9回「学習会」2007年12月22日(土)18:30〜20:30
       (菅野良之・東京漢点字羽化の会)


 「レーズライター」(店、月、肉、分、日、性、心、口、囲、十、止、必、才、正)

 学習会内容
 ハ行、マ行の一マス漢字
 ・ヘ(1・2・3・4・6の点)「玉」() 常用字解では魂が元とある。たましいにはほかに霊、魄の字がある。霊魂は清い魂。玉は価値の高いもの。
   たま偏、おう偏として使われる。理、珍、珈琲、珊瑚、班、球、現など。
 ・ホ(2・3・4・6)「方」() 常用字解では上の部分が木の枝、下の部分が死んだ人の身体を意味している。方は、正方形・長方形というように四角い形の意味で、集落のはずれの木の枝に遺体を吊るし、魔物から集落を守る。
   ほう偏、かた偏として、放、芳、紡、訪、族、旅、遊、坊、房、防等多数
 ・マ(1・3・5・6)「石」() 常用字解では雁垂れと口からなり、雁垂れは切りたった崖で、崖は神様が降りてくる所、口はサイを捧げた形。
   岩は大きな石を表す。
   部首は石偏で、研、硬、硯、砲、破、砂、砥、砕、砦、砌 等多数。
 ・ミ(1・2・3・5・6)「耳」() 常用字解では聖(ひじり、神様の声を聴く人)からきた文字。ほかには、あやふやなことの意味もある。
   耳偏として、聞、聴、取(つくりの又は手の形、戦で相手を殺した戦果として相手の耳を切り取った)、恥、職、聡、聟、聚など
 ・ム(1・3・4・5・6)「車」() 戦車を象った文字。
  車偏として、転、輪、軸、斬、輸、較、運、庫、軍(車の上に旗がなびいた様子)、軒、軽、輝、轌など多数。
 ・モ(2・3・4・5・6)「門」() 両開きの出入り口。戸は片開き。
   部首は門構え。悶、問、間、関、開閉、閣(高殿)、閂、閑、癇など多数。

  第10回学習会 2008年1月26日(土)
  「レーズライター」(店、月、肉、分、日、性、心、口、囲、十、止、必、才、正)
 学習会内容
 ヤ行、ラ行の一マス文字
 ・ヤ(3・4の点)「病」() 病垂に一、人、冂
  (えん構)で体を象っている。 丙は十干(甲・乙 ・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)の丙(ひのえ)にあたる。十干は十二支とあわせ干支(えと)と称する。
   音読みのビョウは呉音、ヘイは漢音。ヘイは疾病(しっぺい)に使われ、疾は急性病、病は慢性病を意味し、いずれも病気をいう。
 病垂:痛、痘、痞、症、疸、疼など
 ・ユ(3・4・6)「行」() 音読みのコウは漢音、ギョウは呉音、アンは唐音。
   元々は左右同形。行人偏、行構え(左右の間に文字が入る)に使われる。
 行人偏:彷、役、往、彼、彿、律、後、待、徐、御、微など。
 行構え:術、街、衝、衛、衡など。
 *テキストにある行方(ゆくえ)は氏名では「なめかた」と読む。
   アンの読み方には行脚(あんぎゃ)、アンドン行灯(行燈)がある。
 ・ヨ(3・4・5)「店」() 常用字解では物を置く場所。建物内の一部に物を置き、並べたことから、商店として物を売買する所に転じていった。
   漢点字では广垂れ(まだれ)に使われる。
 广垂れ:広、庄、序、床、底、府、庭、麻、庁、座、康、庶、庫など。
 ・ラ(1・5)「月」() 音読みのゲツは漢音、ガツは呉音。中国から入ってきた文字の読み方は時代順に「呉音」、「漢音」、「唐音」と呼ばれる。
  「明」の日は窓の意味で、窓から月の光が入ると明るいことからきている。
 月の付く字:朋、朔、脅、朝など。
 ・ラ下がり(2・6)「肉」() 肉の切り口の形からきた。部首は肉月。身体や食物に関する文字に使われる。
胸、肺、胃、腸、腰、臓、肝、胆、脳、骨、筋、脚、肘など多数。
   五臓(肝臓、心臓、脾臓、肺、腎臓)、六腑(大腸、小腸、胆、胃、三焦、膀胱)。


「うか」067
  第11回「学習会」2008年2月23日(土)
  「レーズライター」(分、日、性、心、口,囲、十、止、必、才、正)

 学習内容
 ラ行の一マス文字
 ・リ(1・2・5の点)「分」 音読みのブンは呉音、フンは漢音、ブは慣用音。
 八頭や三角の屋根を表す。八頭は他に公。三角屋根は他に食・金があり、人頭(ひとがしら)も三角屋根を表す。
 訓読みには2つの送り仮名が付く。音・訓ともに、いずれも意味は異なる。
 ・リ下がり(2・3・6)「日」 音読みのジツは漢音、ニチは呉音、訓読みに「か」を追加する。原形は○の中に・
 日偏:明、暗、昭、映、昨等。音及び書は曰(ひらび)で祝詞を入れる器からきたもの。
 ・ル(1・4・5)「性」 音読みのセイは漢音、ショウは呉音。訓読みにはさがのほかに「たち」もある(広辞苑より)。立心偏として用いる。
 ・ル下がり(2・5・6)「心」 音読みのシンは漢音及び呉音。
 部首として下心:志、思、想、憇、慈、悶など。下心には忝や恭や慕の下の部分も云う。
 ・レ(1・2・4・5)「口」 音読みのコウは漢音、クは呉音。祝詞を入れた器。
 クを用いた言葉:口調、異口同音など。
 ・レ下がり(2・3・5・6)「囲」 井桁を囗(国構え)で囲ったもの。防備を意味する。国構えに用いる。音読みのイは漢音及び呉音。
 ・ロ(2・4・5)「十」 音読みのジュウは呉音。慣用音としてジッ、訓読みに「と」、「そ」がある(広辞苑)。
 ・ロ下がり(3・5・6)「止」 音読みのシは漢音・呉音。止め偏として歩、武

 〔近似文字〕
 ・ル下がり+5の点 「必 」 「心」の近似文字。矛やまさかりの柄の部分を象ったもの。秘、密、泌など。音読みヒツは漢・呉音
 ・ロ+4の点 「才 」 「十」の近似文字。目印に立てた木の形(常用字解より)
 音読みサイは漢音。呉音にザイ(広辞苑)。
 ・ロ下がり+1・2の点 「正 」 「止」の近似文字。征が元の字(常用字解)
 音読みセイは漢音、ショウは呉音。

  第12回学習会 2008年3月22日(土)
  「レーズライター」(林、森、材、相、想、果、休、保、来)

 学習内容(基本文字が2及び3合わさってできる漢点字)
 ・木(1・2・6の点)を部首とした文字。
 「林 」 木が2つ並んだ文字。植物が地べたから生えてきた様子を表す。会意文字。音読みのリンは漢・呉音
 「森 」 木+ウ(1・3で3つを表す)。ちなみに「品 」は口+ウ。音読みのシンは漢・呉音。
 「材 」 才(2・4・5)+木で表され、偏と旁が反対となった一種の逆転文字。木製品の元になるもの。『木材」は材木にする前の木、「材木」は製材した木。
 ・相 木+目(1・2・3・4・5・6)と相を含む文字
 「相 」 木と目で構成。木をじっと見る、という意味。会意文字。音読みソウは呉音、ショウは漢音。訓読みにすがた、人名にすけがある(広辞苑)。
 文字例のほかに、手相、家相や相模(さがみ)、相撲(すもう)など多数。
 相模は関八州の一つで、他は武蔵、安房、上総、下総、常陸、上野、下野。
 「想 」 相+心(2・5・6、ル下がり)。漢点字では相と心ではなく、木と心の2つで表す(基本的に漢点字は2マスを使うため)。訓読みのおも‐うには、他に思、憶、念がある。
 ・果と果を含む文字
 「果 」 田(1・3・5)+木。木の上に田を乗せた形。音読みのカは漢・呉音
 因果、成果、結果など果の付く字は多い。
 「課 」 言偏(1・2・4)+木。果物の意味(常用字解)、特に柑橘類。外皮を剥くと中身がいくつかに分かれている(房)もの。房には部屋という意味もあり、転じて役所や会社の組織の単位に用いられる。
 ・休と休を含む文字
 「休 」 人・人偏(1・3)+木。音読みキュウは漢音、クは呉音。
 「保 」 人偏+口(1・2・4・5)。音読みホは慣用音、ホウは漢・呉音。
 ・未(1・2・6+4)を部首として含む文字
 「来 」 未+(1・3)旧字の「來」は麦の穂の実った形を表す。音読みのライは漢・呉音。訓読みには「このかた」もある(広辞苑)。


「うか」068
  第13回「学習会」2008年4月19日(土)
  レーズライター:味、体、字、宗、宝、安、案、穴

 学習内容
 ・未 (1・2・6+4)を部首として含む文字。
 「味 」 口偏+4。音読みのミは呉音、ビは漢音。ビの使われ方は、気味(キビで、キミの転じたもの)。熟語の含味は深く味わう意味で、吟味は趣を味わう、物事をよく調べるという意味になる。
 ・本 (1・2・6+6)を部首として服務文字。
 「体 」 人(1・3)偏+6。音読みのタイは呉音、テイは漢音。テイの使われ方は、有体(ありてい)、体裁(テイサイ)、旅体(タビテイ)など。元の字は體(がいこつ)で、骨組みからきている。
 ・ウ冠 (1・4)を部首として含む文字。
 「字 」 ウ冠+子(2・4・6)。音読みのジは呉音。ウ冠は屋根を表し、子供の名前をつけるためにみたまやへ入るという意味。訓読みのあざなは幼少の頃の通称。
 「宗 」 ウ冠+示(1・2・3・4)。三脚の上に供物を載せる台、祭壇に貢物を捧げるということを表す。音読みのシュウは慣用音、ソウは漢音。ソウは宗家(ソウケ)に使われ、皇帝の呼称となった。
 「宝」 ウ冠+玉(1・2・3・4・6)。音読みホウは漢・呉音。
 ・安 (1・4+1・3・4・6)とそれを含む文字
 「安 」 ウ冠+女(1・3・4・6)。元は女性が嫁ぐ時に最初にみたまやへお参りしたことからきている。音読みのアンは漢・呉音。漢文訓読語は安んぞ(いずく−んぞ)と読む。
 「案 」 女+木(1・2・6)でウ冠を省略。元は机を意味した。女性が書く手紙の末尾の案下(あんげ)とは机の下で書いたという謙遜表現。他に案山子(かかし)の例がある。音読みのアンは漢・呉音。
 ・穴 (1・4+1・2・5)とそれを冠とする文字
 「穴 」 ウ冠+八(1・2・5)。音読みのケツは漢・呉音。穴冠として用いる。


  第14回「学習会」2008年5月17日(土)
  レーズライター:協、直、朝、世、葉、古、苦、枯

 学習内容
 ・穴 (1・4)冠を部首として含む文字。
 19「究 」穴冠+九(2・4)で構成。体を曲げてかがめた形を象った文字(常用字解)。音読みのキュウは漢音、クは呉音。クの使われ方は、究竟(くきょう。真理の究極、きわめてすぐれていること、という意味)。究竟覚(くきょうかく。悟りの極致、という意味)。
 ・完 (1・4と2・5)とそれを含む文字。
 20「完 」ウ(1・3)冠と元(2・5)で構成。戦を終え、みたまやへお参りする(常用字解)。一つのことが終わったという意味。音読みのカンは漢音。
 21「院 」こざと偏(1・5・6)と完(2・5)で構成。こざと偏は神様との関係が深い。元は他の字が使われ、音読みはカン→エン(漢音)→イン(慣用音)と変化。エンのつく文字は書院(しょえん、しょいんに同じ)がある。
 ・ワ冠(2・5)を部首として含む文字。
 22「軍 」ワ冠+車(1・3・4・5・6)で構成。軍の大将が乗る車とワ冠は軍旗を意味する(常用字解)。音読みのグンは呉音、クンは漢音。訓読みにいくさがある。軍のつく文字として軍鶏(しゃも)≠ェある。
 ・十(2・4・5)を部首として含む文字。
 23「計 」言偏(1・2・4)と十で構成。比較的新しい文字。十は占いからきたという白川先生説がある。音読みのケイは漢・呉音。訓読みのはかるには、他に「図る」「量る」「測る」「諮る」「謀る」などあり、それぞれ意味が異なる。
 24「早 」日(2・3・6)と十で構成。常用字解ではいわゆる早い≠フ意味ではなく、未明とか薄暗い早朝を意味している。十≠ヘ草の葉を表す意味がある。音読みのソウは漢・呉音、サは慣用音。早稲(わせ)≠ノ対するおくて≠ノは晩稲(他に晩生、奥手、億手、晩熟)がある。ちなみに15の「草」は「早」からきたものである。
 25「協 」 十と力(1・3・4)で構成。人が集まって何かを行う。力≠ヘ農具の鍬を意味し、人々が寄り集まって田を耕したことからきている(白川先生説)。音読みのキョウは漢音。協同≠ニ同義に共同≠ェある。
 26「直 」 十と目(1・2・3・4・5・6)で構成。目の上に飾りを付け、まじないをして、物事を正す(常用字解)。音読みのチョクは漢音、ジキは呉音。名前にあたい≠ェある。熟語で他に、正直、直筆や、訓読みで直会(なおらい)≠ヘ神事、祭事後に神酒や神饌を口にする酒宴のことをいう。

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